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昨年12月中旬のある日、海洋センターの同僚研究員から連絡がありました。栗田湾奥の海面近くを衰弱したカタクチイワシが群泳しているというのです。びっくりして見に行きましたが、確かにやせ細って衰弱した5~6センチ程のカタクチイワシが群泳しています。中にはすでに衰弱死したものもいます。怪しい出来事です。タモ網ですくい、研究室に持ち帰り調べてみて、また奇々怪々。解剖しても血が出ません。鰓は貧血して白くなり、大型の寄生虫が寄生していました(写真)。寄生虫は単生類の仲間で、カタクチイワシの鰓にのみ寄生する種類でした。
このような現象が人目に付くのは非常に珍しいようで、約20年前の1983年に愛媛県の伊予灘で発生したカタクチイワシの大量死事例が新聞等で取り上げられたようです。カタクチイワシでの大量寄生が20年ぶりかどうか、あるいは温暖化の影響かどうか、は判りません。
京都府立海洋センター海洋生物部長 中津川俊雄
(平成19年4月4日、京都新聞掲載)
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