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孵化してからわずか数ヶ月で親になり産卵します。餌のプランクトンが豊富にあれば、数日間隔で何度も産卵するので、「ネズミ算的に」とも言える増殖能力を備えています。体の成長の代わりに、エネルギーを生殖に使うことで、種族を繁栄・維持させる戦略です。肥満や少子化に悩む、現代の日本人とは逆であると言えます。
1990年頃を境に、日本周辺の海は温暖化の時代を迎えました。マイワシに替わって、カタクチイワシの増加に適した環境になりました。ブリやサワラも温暖化に適応した種で、近年漁獲量が増加しています。カタクチイワシはこれらの魚の重要な餌になっています。
おせち料理には、主役級であるブリの照り焼きのほか、数の子、黒豆、田作りが欠かせません。田作りは素干しした小型のカタクチイワシを調理したものです。昔は、細かく砕いたものを稲作の肥料にしていました。効果は抜群で、収穫量が一段と増したそうです。新しい年の豊作、大漁を願って、尾頭付きの田作りを頂きましょう。
京都府立海洋センター主任研究員 和田洋藏
(平成19年12月26日、京都新聞掲載)
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