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日本周辺に広く分布しており、真珠を作ることから真珠貝とも呼ばれます。貝殻の内面は美しい輝きを放ち、地味な外側と対照的です。足糸と呼ばれる丈夫な糸を使って、岩などの基質に自らを固定する習性は、ムラサキイガイにとても良く似ています。イワガキ養殖では貝の表面や網カゴに沢山の小型個体が付着していることも多く、漁業現場においては真珠貝といえども厄介物として扱われます。
貝殻と真珠が持つ独特の光沢の秘密は、アコヤガイの外とう套が分泌する真珠層に隠されています。真珠層は貝殻を構成する炭酸カルシウム結晶やコンキオリンと呼ばれるタンパク質が形成する微細な層から成り、光はこの層で複雑に反射し鮮やかな色彩が生まれます。こうした発色の仕組みは構造色と呼ばれ、タマムシやカナブンなど金属色に輝く昆虫類でも観察されます。食品として市場流通することはほとんどありませんが、愛媛県や三重県などの真珠産地では、貝を開いて真珠を取り出す浜揚げの時期に合わせて貝柱が出回り、賞味されているようです。
(平成24年3月28日 今西 裕一)
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