中丹広域振興局
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育休制度はあるけれど取得するには周りに気を遣うし、利用しづらい雰囲気がある。そんな悩みを抱えている企業や、子育て世代の方もいるのではないでしょうか。
福知山市三和町にあるコアマシナリー株式会社では、育休制度を利用しやすい社内になるように、さまざまな工夫をしています。育休を取得することは特別なことではなく、普通のことという社長の思いがあるからです。
金属部品の製造業を営み、従業員数は26名。平均年齢は34歳程度という若い世代が多く働いているなか、どのように社員のプライベートと仕事の両立をはかっているのでしょうか?
今回はコアマシナリー株式会社 代表取締役 岡本真樹さんと、総務課 係長 衣川尚剛さんにお話をうかがいました。
コアマシナリー株式会社は、半導体関連装置をはじめとする先端分野で使用される、産業機械向けの金属部品を製作しています。
工場内は機械が整然と並べられています
金属のなかでも、アルミニウムの加工を得意としており、金属を削って加工する「切削加工」と、金属の表面を加工する「表面加工」による複合加工ができる全国でも数少ない会社のひとつです。
現在の事業スタイルになってから46年間の実績を誇り、近年は自社商品開発や宇宙事業への参入にも取り組んでいます。
制作品の一つSDGsカラーホイールのオブジェとトロフィ
「同じことをやり続けるところにはあまり価値が見出せないんです。常にアップデートしていく姿勢が必要だし、この技術はこれにしか使えないという固定観念を捨てることも必要です」
岡本社長
技術の価値を高めるためには試行錯誤していくことが重要。そう熱く語ってくれたのは、岡本社長です。
「機械が最新になればなるほど、誰でも一定のクオリティのものをつくることができます。しかしどうすれば効率よく精度の高いものができるのか、試行錯誤していくところに人の癖や特徴が出てくるのかなとは思います。うちのベテランのメンバーなんかは、間違った条件で削っていると音で気付きますから。技術を高めるためには、人の経験も必要だと感じています」
岡本社長の試行錯誤は仕事に対してだけではなく、社内の雰囲気づくりにもおよんでいます。日頃から雑談や面談を通して社内の風通しをよくし、従業員を大切にすることを心がけるーー。その精神が、子育て支援を積極的に実践する姿勢にもつながっているのです。
子育て支援を拡充することになった転機は、2017年の組織変更時。子育て世代が多く働いていたため、潜在的なニーズを汲みとり、制度の拡充にいたりました。
育児休業のほかにも、時間単位での有給休暇や時間外労働の制限など、さまざまな制度を積極的に取り入れています。
岡本社長が制度を導入する際に大事にしたのは、制度を利用しやすい環境づくりです。制度の利用を会社全体でうながすほか、業務分担のフォローにも力を入れています。
「働きやすくなる制度はいっぱいあるんですけど、そもそもそれ普通やんっていう感じで導入しています。そのためか、休業制度を利用しづらい雰囲気はうちの会社にはありません」
ここからは実際に育児休業を利用した経験がある、総務課の衣川係長にもお話をうかがいます。
衣川係長は2012年に入社。ご家族からの要望もあり、お子さんが生まれてから約8週間の育児休業と、その後2ヶ月間の短時間勤務(8時00分〜15時00分)を利用しました。
衣川係長
「育児休業のあとに短時間勤務も利用できたのは特によかったです。初めての子どもだったので、夫婦で相談しあったり、不安や喜びの時間を共有できました。もし制度を利用していなかったら、うちの場合ギクシャクしていたと思います」
当時、身内からは「育休を取れるなんていい会社だね」と口を揃えて言われたといいます。
岡本社長が従業員の働きやすさや子育て支援に取り組んでいる背景には、仕事のパフォーマンスを上げるためにはプライベートの充実が必要という考え方があるためです。
「仕事のパフォーマンスを木に例えるなら、プライベートや見えない部分は土だと思うんです。土がダメだと木は育たないし、実もならない。そういう意味で大切にしています」
育休を含めた休業制度を取り入れるようになってからは、仕事の成果にも少しずつ変化が起こりました。
まず変化として現われたのは、売上高に対する労務費の割合が下がるという結果が出たことです。限られた時間の中で、従業員一人ひとりの仕事のパフォーマンスが上がったためでした。
「アンケートを取ると、有給取得率が高く、それによりリフレッシュできたという結果があり、仕事の疲れが溜まりにくいのかもしれない。それが休み明けのパフォーマンスであったり、従業員の仕事への姿勢を変えたということもあると思います」
実際に休業制度を利用した衣川係長にも変化がありました。
「制度を利用するまでは他人事でしたが、ほかの人にも積極的に利用してほしいと思うようになりました。もし周りの人が子育てをする状況になったら、業務のことも子育てのことも相談に乗れたらと思います」
また、仕事の効率を上げるためにアナログで行っていた業務をデジタルに移行させることも実践。その結果、他者に仕事をまかせやすくなり、より休みやすくなったといいます。
そんな一人ひとりの意識の変化が相乗効果となり、ますます制度を気兼ねなく利用できる、それが普通と思える空気をつくりだしているのかもしれません。
最後に、有給取得や育休の取り組みに、なかなか積極的になれないと悩む企業やそこで働く方へ、岡本社長からメッセージをいただきました。
「従業員が育休を取得してもしなくても、広いスケールで見たときに、会社にはそんなに影響がないはずなんです。だけど、従業員やその子どもの人生の中では二度と取り戻せない大事な時間ということを考えれば、育休を取得するべきなのは、火を見るよりも明らかだと思っています」
「まずは会社で取り入れてみるしかないと思います。良い悪いの結果が出たらそれを受け止めて、どうするのか考える」
岡本社長は今後も、制度の導入や運用に対して「力を入れる」のではなく、ごく自然に「力を抜いて」やっていきたいといいます。
もしかするとその意識が、新しい考え方やこれからの時代のあるべき働き方を、柔軟に取り入れようとする姿勢につながっているのかもしれません。
コアマシナリー株式会社は、こうした育休制度をはじめとする、働き方に関する制度を整えた結果、従業員一人ひとりの仕事のパフォーマンスの向上が見られたり、約2週間に1人、応募や問い合わせがあるほど求人も好調。好循環が生まれています。
少し先の未来を見据えて、これからも新しい変化を起こしていかれるでしょう。
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