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クワシロカイガラムシは近年多発傾向にあります。本害虫はふ化期のわずかな期間以外は殻に覆われているので薬液がかかりにくく防除が難しい害虫です。そのため、防除適期である「50パーセントふ化卵塊率が半数となる時期」を正確に知ることが防除の成否のカギです。
「50パーセントふ化卵塊率が半数となる時期」は気温データを用いて以下の方法で推定でき、茶園での観察と併用することで防除適期を正確に把握できます。
有効積算温度 287日度
起算日 1月1日
発育ゼロ点 10.5度
有効積算温度 688日度
起算日 前世代の幼虫ふ化最盛日
発育ゼロ点 10.8度
発育停止 30度以上
有効積算温度は茶株内温度から求めます。周辺の気温データやアメダスデータなどを利用する場合は以下の温度補正式を用いて補正を行います。
露天栽培期間 y=0.9608x-0.2239(xは気温、yは茶株内温度)
一重被覆期間 y=0.8124x+1.2012
二重被覆期間 y=0.7437x+2.1705
番刈り後約10日間(自然仕立て園) y=1.1749x-3.1831
クワシロカイガラムシは京都府の多くの地域で年間3回発生し、平均的なふ化時期は5月下旬から6月上旬、7月下旬から8月上旬、9月下旬から10月上旬です。南山城村の一部など年間発生回数が2回の地域では推定の精度がやや落ちることがあります。
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雌成虫と卵(かいがらをはがしたところ) |
クワシロカイガラムシにはチビトビコバチ、サルメンツヤコバチなどの寄生蜂、ハレヤヒメテントウやタマバエ類などの捕食者などの天敵がいます。農薬を散布するときはこれらの天敵に影響の小さいものを使用します。
寄生蜂に対して影響が小さい薬剤はIGR剤、殺ダニ剤、BT剤、殺菌剤ですが、農薬によって影響が異なるので、指導機関等にお問い合わせください。一般的に有機リン剤やピレスロイド剤は影響が大きい薬剤です。
防除は番刈り後に行います。鉄砲ノズル等を用いて10アールあたり約750リットルを散布します。
この時期の防除はチャの枝条がかなり繁茂した状態で行うため、寄生部位である幹に薬液が到達しにくくなります。そのため、薬液は10アールあたり約1000リットルを散布します。また、第1世代と比べてふ化期もばらつくため、防除効果は第1世代より劣ります。
10アールあたり約1000リットルを散布し、寄生部位である幹や枝に薬液を付着させます。アーチ型噴口などの専用のノズルを用いると効果的です。
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アーチ型噴口 |
せん枝や中切り更新によってクワシロカイガラムシを物理的に除去することができます。
また、枝条を除去することで寄生部位である幹や枝に薬液がかかりやすくなるため、その後の農薬による防除効果を高めることができます。
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