第1回基本指針策定ワーキング会議開催結果
日時
平成17年11月29日(火曜) 午後3時30分から5時30分まで
場所
京都府公館4階 第5会議室
出席者
池坊委員、小暮委員、西口委員、山本委員及び事務局(京都府)
内容
(1)開会あいさつ
(2)議事(進行:西口委員)
基本指針策定スケジュールについて
事務局より、スケジュールについて説明。平成18年9月府議会に中間案の報告、その後パブコメを経て、12月府議会に最終案を報告し、基本指針策定となる。
基本指針について
事務局
- 国の基本方針が、おおむね5年間を見通した施策を定めていることや、平成23年度に国民文化祭を京都府で開催することなどから、指針の想定する期間は平成18年度から23年度とし、その後、ポスト国民文化祭も念頭に置いて、指針を見直すのが良いのではないか。
- 基本指針の構成(案)については、第1の基本的方向で、文化力とは何かを具体的に説明し、文化力と文化芸術との関係性を説明出来ればと考えている。基本理念については、条例に規定してある理念をより具体的に説明し、府の役割等についても、条例に規定されているものをより具体的に示していく必要があると考える。基本的施策や文化力を発揮するための施策については、このワーキングや懇話会の各研究会等で具体的に決めていただく。また、推進体制については、今年度中にどういったものになるか決めていきたい。
委員からの意見
- 日本アートマネージメント学会で、「今あえて問う、アートの力」というシンポジウムを開催したが、アートには3つの力がある。一つは「固有力、可能力=potential」、つまり、アートそのものが価値のあるもので、価値あるものには力がある。二つ目は「文化が社会関係資本(経済、地域コミュニティ、福祉など)に関係していく力=power」であり、これは条例がいう文化力の大事な力だと考える。3つ目は条例にあまり関係ないが、「強制力=force」であり、アートは人をあおり立てる力がある。これらの力を念頭に置くと、文化力の整理がしやすいのではないか。
- 基本指針を考えていくときは、文化芸術との関係などの理念の解釈より、具体的施策を思い切って盛り込んでいかないと意味がない。どういう施策をすることによって京都を活性化していけるのかを書いていかないと。
- 文化を経済と結びつけることは必ずしも文化を貶めてる、卑しめてることにはならない。文化本来が持ってる価値は尊重されるべきだが、その一方で、文化が経済的な効果を呼び起こしていく、地域を活性化につなげるなど、周りに派生していく力も文化の持っている豊かな力の一つだと思う。
- 文化は一定の力を持たないと文化でない。それは人の暮らしを幸せにする力。そういう意味で、経済的側面は大きな意味を持つのではないか。
- 社会に影響していくかという力を重視するのなら、作家の方も職人の方も同じである。文化そのものが持っている力と社会に影響していく力は、優劣はなく、同様に扱わないといけない。
- 作家、職人、京セラみたいな最先端技術という3分野があるが、特に職人については、これだけのものづくり技術が蓄積されているのは、1200年の歴史がある京都だけ。基本的施策の「文化的創作物を創造する者への支援」の「創造する者」はこの3分野だと思う。この3分野が結集して大きなパワーとなるシステムが必要。また、京都は1200年の歴史が積み上げたソフトが多くある。これを活用していかないと。
- 演劇力をいかにビジネスモデル化するかという研究会をやっている。電通の社員や京都の劇団員たちがメンバーである。そこで考えたものは次の図のとおり。
図 [縦軸:マーケット、横軸:リソース]
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既存
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活用・拡大
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既存
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劇場・ホールで公演する。 |
劇場にカフェやグッズ販売店を併設する。コンテンツを増やす。 |
新規
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結婚式等で馴れ初め等を演劇をする。メディアとういうコンテンツを利用する。 |
ビジネスパーソン研修(演劇指導法を用いて接客研修)を行う。大学生に対する就職活動セミナー(面接指導)に活用する。 |
- 通常は既存のリソースを用いて既存のマーケットを増やそうと考える。これだと行き詰まる。そこで研究会では、新規マーケットと既存のリソースの活用・拡大を考え、ビジネスパーソン研修を思いついた。
- 市立芸術大学の学生の作品を京都銀行が毎年買っているが、こういうマーケットに売っていくことに対して、学生に抵抗感がなくなっている。
- 芸術大学や伝統工芸専門学校の卒業生は技術はあるのに就職先がない現状だが、受け皿に期待するばかりでなく、新しいマーケットを開拓していくことで解決していくのではないか。
- ジャンルと時代をうまく整理・分類した上で、具体的施策を盛り込むと分かりやすくなる。
- 京の文化を他と差異化させる場合、歴史のことを言わざるを得ない。一つの芸術、池坊委員の華道を例に取ると、その周りに花市や刃物屋などがある。茶道も同じ。芸術の周りにいろんな営み・商いがある。そういったことも体系化出来れば。
- 最近、世阿弥に関する本を読み返して思ったのが、世阿弥までは共同体の文化、それ以降は都市の芸能・文化、つまり人気をどう取るかという真剣勝負で文化を洗練させてきた。京都府の文化は、共同体の文化と都市の文化が両方ある。共同体の文化は忘れがちだが、これがあったからこそ、世阿弥以降の都市の文化に広がりが生まれた。また、共同体と都市の文化の間に優劣があるわけではない。
- 条例で大きな柱は3つある。「芸術」「府域の文化」「次世代」の3つがそれだが、この3つを基本指針の中で平等に扱うのは無理ではないか。
- 京都の文化を考えるとき、日本や世界の文化を視野に入れることが必要。あと、行政は従来ボトムアップで全体の底上げを図ってきたが、社会情勢の変化に伴い、見直すことも必要。最近制定された府・市の伝統産業条例は、プルトップの視点が入っている。 文化の施策もそういった視点が必要ではないか。
- 生徒が、伝統文化(華道、茶道、和歌、書道など)の1つを選択して学習する私学の学校があり、今日、発表会を見てきた。来年、京都で全国高校総合文化祭が開催されるが、単独で部門になっていない茶道と華道も「京都」という部門に入れていただくこととなった。こういう取組も京都だからこそ出来るものだと思う。
その他(京都府文化行政に係る意見交換)
↓
- 今年度、CVN(文化ベンチャーネットワーク)を立ち上げるために、調査している。また、今持っている文化のスキルやストックを生かして新しい仕事を創り出すことを目的に、平成18年度に文化による起業コンペティションを開催する。(事務局)
- 国民文化祭のイメージを変えていくために、実験的に何かするというのはどうか。世界中に京都を好きな人がいるから、「全人類京都文化祭」みたいなもの、例えばブラジルで「京都まつり」が行われているようなことをしてみる。全部を京都に集めるのでなく、全国を京都一色にしてしまう。つまり、全国が「京都してるよ。京都しよう。」という状態で、国民文化祭を開催するのも一考ではないか。(委員)
- 文化の拠点が必要だと思う。三条通が賑やかになり、京都文化博物館も別館が自由に入れるようになって、やっと歩み始めたところである。また、開館20周年も近いので、同館に文化の機能を集積していき、文化の発信拠点にしていかないといけない。あと、デジタルネットワークを活用して、文化博物館に京都の映像を全て集約して、そこに行けば全ての映像情報が見ることが出来ればよい。(委員)
- 日本アートマネージメント学会でも、文化の影響力をきちんと念頭に置いている点で、京都府の条例は非常に評価されていた。(委員)
- 委員の皆様からの意見で「芸術なのか生活文化か」「京都市域か府域全体か」「都市の文化か共同体の文化か」という論点があったが、府の仕事はこれら一件相反する両方とも範囲となるので、指針に両方の関係性がうまく書き込めればと思う。(事務局)
(3)閉会